傷―邦銀崩壊
2013年 07月 01日
幸田 真音 著、01年5月発売、文藝春秋 刊
ページ数が多ければ多いほど話しの展開が遅くなり冗長な感じを受けることが多いのだが、今作品に関していえば舞台が日本とアメリカに別れる上、登場人物も多いので上下巻で600Pながら最後まで余りダレることもなく読み通すことが出来た。それにしても主人公が「性格のきつい美女」という相変わらずの設定はちと飽きるかも。経済小説ならしかたがないのか。
相次ぐ金融破綻に効果的な経済政策を打ち出せない政府、プライドだけの大蔵官僚、不良債権隠しに走る銀行。そんな折、邦銀ニューヨーク支店の花形ディーラーが高層ホテルから身を投げた。旧友の芹沢は自殺の真相を探るうちに、ウォール街で辣腕を振るうトップセールスウーマン 州波と出会う。「あんな銀行なんかつぶれればいい」。彼女は邦銀に深い恨みを抱いていた。そして州波はそのキャリアと私財の全てをなげうって芹沢とともに驚くべき秘策を実行する。
内容的には「金融腐蝕列島」と被りそうな感じなのだが、「自殺の謎」を解明するというミステリー的な要素も取り入れられているところが明らかに違うか。そういえば、今まで読んできた氏の作品ではこういう形は初めてだったような気がする。それとPCのデーターをコピーするメディアがCDというのも今では古臭さを感じてしまうのは仕方ないことか。(^_^;)