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建築デザインと日々徒然


by agharta_u_design
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髪結い伊三次捕物余話

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宇江佐真理 著、'00年4月発売、文藝春秋 刊

シリーズ第一巻にあたる「幻の声」で第75回オール讀物新人賞受賞を受賞し、その後、「紫紺のつばめ」「さらば深川」「さんだらぼっち」「黒く塗れ」「君を乗せる舟」「雨を見たか」「我、言挙げす」「今日を刻む時計」「心に吹く風」「明日のことは知らず」とほぼ5年間発表され続けてきた。シリーズ作品としてはこの他に「泣きの銀次」があるぐらいか。

八丁堀の同心不破友之進から手先として使われる廻り髪結いの伊三次。辰巳芸者の文吉と心を通わせながら、手先として江戸の町を東西奔走する。伊三次と文吉、沸き起こる数々の事件を通して江戸の市井の人々の哀歓、法では裁けぬ浮世のしがらみが書き綴られていく。氏の精密な筆致、構成力があればこそ存分に楽しめる作品だと思う。

個人邸には「我、言挙げす」以降は読んでないし、余り読む気にもならない。伊三次と文吉の粋な関係がたまらなく魅力的で引きずり込まれたのだが、「さらば深川」以降は二人は結婚して同居してしまうばかりか、「君を乗せる舟」辺りからは物語の中心が定廻り同心の不破友之進の嫡男の龍之介になってしまう。こうなると読み始めた時の伊三次と文吉にワクワクした気持ちは無くなってしまった。内容的には勿論充分楽しめるのだが、違うシリーズにして頂ければ有り難かったかも。
by agharta_u_design | 2013-06-12 12:01 | Book