甘露梅-お針子おとせ吉原春秋
2012年 09月 03日
宇江佐真理 著、'04年06月発売、光文社 刊
訳の分からない、所謂、ファンタージーという作品を暫らく追いかけていたので、久しぶりの宇江佐真理はなんとも心に滲みる。池上正太郎氏亡き後、誰の時代小説を読めばいいのかと思案していた時に出会ったのがこの宇江佐真理氏。女性らしいすっと心に入り込んでくるような状況描写や心理描写が心地良い。やっぱり伏線は無いより有った方が数段愉しめると実感。
岡っ引きの夫に先立たれた主人公 おとせは、息子が結婚したのを機会に家を出る決意をする。そして吉原で住み込みのお針子をすることとなった。初めて立ち入る世界で遊女達の生活に触れ、その情愛、悲哀、矜持を目の当たりにする。その世界でおとせは多くの人に助けられ生きていくが、ある時、吉原を大火災が襲った。そこからまた新たな人生がスタートすることになる。
甘露梅はシソの葉で包んだ青梅を砂糖漬けにしたもので、江戸時代、新吉原名物の和菓子でる。文中にもそれを作る工程が詳しく描写されているので友人の和菓子屋さんに再現してもらおうかと思ったが、ググってみるとそれほど特別なものじゃなくて通販でも簡単に入手できる模様。まぁ、当然、江戸時代と現代では何もかにも違うので全く同じものというわけには行かないのだろうが。いや、現代風にアレンジされている方が食べ易い様な気がする。(^_^;)