あほうがらす
2012年 07月 13日
池波 正太郎 著、'85年3月発売、新潮社 刊
「火消しの殿」「運の矢」「鳥居強右衛門」「荒木又右衛門」「つるつる」「あほうがらす」「元禄色子」「男色武士道」「夢の茶屋」「狐と馬」「稲妻」の11編からなる短編集。おまけに今回もなにやら被っているような気がする物もあるし。連作短編集は好きなんだけど完全に縁が切れている短編集は読み足りなくて読後がすっきりしないのは私だけだろうか・・・だけかもしれない。
表題の「あほうがらす」。宗六は十年振りに兄の万右衛門を見掛けたが、昔、宗六は兄に迷惑を掛けていたので今でも信用が無い。この宗六、現在では表稼業を持っているのだが、裏ではあほうがらすという一種の売春斡旋屋を生業としている。しかし、金で女が幸福をつかめるように最後まで指導を行う信念をもったあほうがらすを自認している為、地道な表稼業を持ち金には欲を出さないようにしている。
調べてみると池波 正太郎氏は短編で一度描いた世界を再び長編に書きおこして別の世界を描くことをするようなので、是非ともこの表題にもなっている「あほうがらす」の長編を読んでみたかったものである。まぁ、既に鬼籍に入られているので望んでもしょうがないことなのであるが。せめて氏が好んで食べられていた肴を模倣しながら妄想を愉しむとしようか。