密約 外務省機密漏洩事件
2012年 05月 26日
澤地久枝 著、06年08月17日発売、岩波現代文庫刊
「運命の人」を読んだついでにもう少しリアルなもの、裁判自体にテーマをおいたものをということで、バンドのハーピストのお父上の蔵書をお借りした。正直、この手の物は以前読んだ松本清張の「日本の黒い霧」同様なかなか文章が目に馴染みにくくて読みにくいのだが、女性事務官 蓮見喜久子氏と未だに現役国会議員 横路孝弘氏煮興味があったので読み進めた。
概ね「運命の人」と同じあらすじなので省略するが、著者が女性のせいか蓮見喜久子氏に対して視点がぶれる部分があるのが全体的に読みにくくしているような気がする。これについては渡辺恒雄氏が「一方的に被害者である「無垢な女」を演じつづける蓮見さん」という表現が一番正鵠を射ていると思う。また全ての発端となった横路孝弘氏は一貫として現在も無関係を通しているのは驚くべき事だ。
それにしても「正義」というものは時の権力者によってどうにでもなるというのは恐ろしいものだ。本来の「密約」が「情交」にすり替えられて世論が誘導されていく様は圧巻。また2000年に米公文書公開でこの密約が立証されたにも関わらず、2011年9月29日の密約情報開示訴訟控訴審では「政府が文書はあったが廃棄済みで存在しないと言っているから、それを信じるしかない」という趣旨で原告は逆転敗訴している。現在、原告側は上告中なので成り行きを見守りたい。