あかんべえ
2011年 08月 05日
宮部みゆき著 '02年3月16日発売 PHP研究所
「模倣犯」はその余りの長さ、本の重さに負けて挫折。週刊誌で連載されていた「ICO -霧の城-」は余りにもファンタジー過ぎてこれまた挫折。宮部みゆきとは相性が悪いのだろうと思っていたところに、この文庫本をお借りすることとなった。正直、余り気乗りのしないまま読み始めたのだが、どうして一気に上下巻を読み切ってしまった。いや、意外と面白いじゃない。
深川のおばけのたまり場になっている居抜きの料理屋で開店してしまった「ふね屋」、ひとり娘おりんにはここにいるおばけたちが見える。口をきいてくれない少女のお梅、熱病で死にかけたおりんを治療してくれた按摩の笑い坊、のんびりした侍亡霊の玄之介、粋な姐さん亡霊のおみつ、凄惨な過去をもつ侍おどろ髪たち。おばけたちは、昔この土地で起きたある事件に関わった者たちらしい。おりんは彼らに助けられながら昔の事件を探り始めた。
時代小説とファンタジー小説を足したような内容で、時代設定がなにも江戸時代でなくてもいいんじゃないかと思いながら読み終えてしまった。明治でも昭和の初期でもいつでもいいような気がするのだが、まぁファンタジー性を豊かにするには江戸時代が良かっただろう。いや、これを機会に読まず嫌いをあらためて宮部みゆきも読んでみようという気になった。